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第7話  

「そうか?」

聡は眉間を揉みながら、再び目を閉じた。

私も目を閉じた。

もし、聡がもう少しだけ自分の考えを明確に伝え、たとえ電話一本でもかけてくれたなら――

たとえ彼の声を永遠にはっきりと聞けなくても。

私の携帯の着信音が鳴るでしょう。

鳴るはずだった――

彼のこの車のトランクの中で。

だが、彼はそうしなかった。

以前も、今も。

これからも、もう二度とないでしょう。

私の腎臓のおかげで、葵の手術は大成功だった。

聡は本当に葵を気にかけていた。彼女が目を覚まさなくても、彼はずっと彼女のそばを離れなかった。

葵が目を覚ましたとき、ようやく聡は心から安堵の息をついた。

「聡、私を救ってくれてありがとう。」

「気にしないで、葵。俺たちは友達だし、葵も昔俺の命を救ってくれたじゃないか。」

葵はかすかに笑みを浮かべ、それ以上は何も言わなかった。

術後の弱さゆえに、言葉を発する力がないように見えた。

だが、私だけは知っていた。

彼女が言葉を飲み込んだのは、罪悪感からだということを。

彼女は知っていたのだ。

かつて聡を救ったのは彼女ではなく、私だったということを。

それでも、聡にとっては、彼を救った人が誰かなんて重要ではなかった。

重要なのは、篠宮葵という存在そのものだったのだ。
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